Menu

研究内容Research

EBV関連がんは欧米に少なく、東アジアに多いという特徴を持つため、本邦において研究推進が望まれている。言い換えれば、本邦で研究を推進しなければ、世界的には関心を得られないため、予後の改善が全く期待されない。
以上を鑑み、ラボメンバーと使命感を持ってEBV関連がんの研究に取り組んできた結果、研究成果(BLOOD 2023)に対する臨床治験が2023年から開始され、研究成果がヒトに還元される最初の第一歩が踏み出された。個人的には予想以上の結果が得られている。今後もこの経験を生かして、自信をもつ研究シーズについては、しっかり患者さんのもとに届ける努力をしていこうと思う。

一方、ウィルス癌は、感染によって短期間のうちに形質転換するがん分野においても極端に偏った状況を作り出す。そのような状況だからこそ、生理的条件下においては隠されているサイエンスが露呈するため、それらを詳細に解析することによって、新しいサイエンスの構築も可能である。実例としては、これだけ次世代シークエンサーによって網羅的な解析が世界的に進んだ現在にあって未だに報告のなかった新規非コードRNAの発見や(NAR 2014)、形質転換が早いため微小環境の構築が生存に必須となるウィルス癌だからこそ明らかにできた細胞外小胞の新機能の同定(Cell Metabolism 2022)などが挙げられる。EBV感染という特殊条件下に従来哺乳類では退化したとされた酵素が再活性化することを見出した。この現象は進化学的に大変興味深い現象であるため、責任分子の性質を詳細に解析していくことが重要と考えている。

AMED肝炎班へ分担研究で入れていただき始めた研究であるが、大学院生を中心に、新しい研究に取り組み、極めて治療効果の高いHepatitis B に結合する新規RNAの同定に成功した。学術的にも新しいRNAなので、興味深いが、まずは治療法という点で、画期的な機能を有するため、その点を大切に特許出願、導出を目指していきたい。

リンパ腫研究と肝炎研究を融合させた結果、来たる新興感染症に備える画期的な治療法開発になりうる重要なシーズ、SPREDs(sPLA2 reacted EV derivatives) を得た。学術的にも、EVとは異なる新たな作用機序を有する点、従来の脂質代謝では説明できない新たな機能を有する点など興味深い点を解明していく必要はあるが、まずは高い治療効果を是非国内での導出を願い、企業との共同研究を推進中である。

今後も治療を目指した研究と新しいサイエンスの構築という両輪を回す研究活動を行うことを目指す。

加えて、EBVで得た知見を他のウィルス疾患に応用する目的で開始したB型肝炎ウィルス(HBV)研究によって、研究対象疾患は肝疾患、腸疾患、サイトカインシンドロームへと広がり、両者の融合による新技術開発を行うなど、新しい分野への展開も進行中である。